2008.2.2最終修正
2008.1.31より
Jonckheereの検定は、順序制約のある(order-restricted)仮説用のノンパラメトリックな検定の代表的なものである。3つ以上の処理があって、目的変数がだんだん大きくなるという傾向的変化があるという内容を検定したいときのものである(しだいに小さくなる場合には、処理に付ける番号を反対にする)。つまり目的変数が、
第1の処理<第2の処理<第3の処理<・・・(以下略)
といった傾向的な変化をするかどうかを問題にするときである。
Jonckheereの検定の検定統計量は、異なる2つの処理間での、目的変数の大小が対立仮説にあっているデータの組み合わせ(ペア)の個数である(Jといった記号で表されることが多い)。
たとえば、3つの処理があって、それぞれ目的変数の値が以下のようだとする。処理の番号が大きいほうが目的変数の値が大きいという傾向的変化を対立仮説とする。
第1の処理 5.4 6.7
第2の処理 7.9 6.5 6.9
第3の処理 8.6 7.8 8.2
3処理なので、異なる2処理の組み合わせは以下の3通りである:処理1vs処理2、処理2vs処理3、処理1vs処理3。それぞれの組み合わせで、異なる処理のデータの大小を比べるわけだが、処理のサンプル数をniとnjとすると、比較の個数はni×njである。上の例では、
処理1vs処理2 サンプル数が2と3なので、6つの比較がある。
処理2vs処理3 サンプル数が3と3なので、9つの比較がある。
処理1vs処理3 サンプル数が2と3なので、6つの比較がある。
番号の大きい処理の方が目的変数が大きい比較の個数を数える、
処理1vs処理2 第2の処理が大きいものは(6.5vs6.7以外)5つなので、5
処理2vs処理3 第3の処理が大きいものは6.5vs6.7以外のすべてなので、8
処理1vs処理3 第3の処理は6つすべてで大きいので、6
検定統計量は3つを合計して5+8+6=19となる。
もう1つ別の例、やはり3処理で、処理の番号が大きいほうが目的変数の値が大きいという傾向的変化を対立仮説とする。同一値のときは0.5とする。
第1の処理 3 8 5 7 7
第2の処理 7 5 8 8 5
第3の処理 8 10 9 11 9
処理1vs処理2 第2の処理の各データからみて、3+1.5+4.5+4.5+1.5=15
処理2vs処理3 第3の処理の各データからみて、4+5+5+5+5=24
処理1vs処理3 第3の処理の各データからみて、4.5+5+5+5+5=24.5
検定統計量は合計して15+24+24.5=63.5となる。
データを2つずつ比べて、その大小の個数を数えて統計量を構成するところは、U検定やKendallの順位相関係数τとよく似ている。実際にそういった検定の拡張として導かれている。
Jonckheereの検定の検定統計量の帰無仮説のもとでの期待値は、各処理のサンプル数をni、全体でのサンプル数つまり馬iをNとして、(N^2-(ni)^2)/4である。
Terpstra, T. J.(1952) The asymptotic normality and consistency of Kendall’s
test against trend, when ties are present in one ranking. Indagationes
Mathematicae, 14: 327-333.
Jonckheere, A.R.(1954) A distribution-free k-sample test against ordered
alternatives. Biometrika, 41 135-145.
Jonckheere, A.R.(1954) A test of significance for the relation between
m rankings and k ranked categories. British Journal of Statistical Psychology,
7: 93-100.[ブロックがある場合]
日本語の解説としては、柳川堯『ノンパラメトリック法』(培風館、1982年、ISBN 4563008591)がよい。