順序制約のある仮説を扱う統計的方法

2008.2.3最終修正(2008.2.1より)

  説明変数がカテゴリカルなものであるとき、対立仮説としては、どこかにちがいがあるといったタイプのものと、ちがいのパターンのうち特定のものをあらかじめ想定するタイプがある。前者の代表は、一元配置分散分析やノンパラメトリックな検定ならKruskal-Wallis検定である。後者の、特定のパターンをあらかじめ想定するタイプの代表的なものが、目的変数の平均値(より正確には位置母数)が次第に大きくなる(あるいは小さくなる)といった傾向的変化を想定するものである。つまり、目的変数の平均が
 第1の処理<第2の処理<第3の処理<第4の処理<・・・(以下省略)
  とか
 第1の処理>第2の処理>第3の処理>第4の処理>・・・(以下省略)
となることを想定するものである。このタイプの仮説を扱う方法を順序制約のある(order-restrictedあるいはorder-restriction)統計的な方法という。このように、目的変数がだんだん大きくなるとか小さくなるとかいった傾向的変化を対立仮説として考えることを傾向性仮説とか、処理に自然な順序があるということもある。順序制約のある統計的方法では、、説明変数を(名義あるいは分類尺度ではなく)順序尺度とみているともいえる。もしも、説明変数が間隔あるいは比率尺度なら回帰(広義)で考えればいいことわけである。
 順序制約のある仮説を想定している場面は比較的多いように思うのだが、他の条件が同じで非傾向性仮説用の検定と傾向性仮説用の検定を比べると、傾向性仮説用の検定の方が使用頻度はかなり低いように思う。一元配置分散分析は代表的な非傾向性仮説用の検定だが、それに対応する(目的変数が正規分布&等分散)傾向性仮説用の検定は何ですか?と聞かれると首をかしげる人も少なくないように思う。

 なお、対立仮説として特定のパターンを想定するタイプとしては、上記のような傾向的変化ではなく、いったん増えてある処理でピークになりそれからは次第に下がるといったもの(アンブレラと呼ばれる)も考えられる。

 傾向性vs非傾向性というちがいは、処理が3つ以上になってはじめて出てくる。なお、だんだん減っていく場合は、処理の番号をひっくり返せばだんだん増えていく場合になるので、傾向的変化としてはだんだん増えていくか減っていくのどちらか片方だけ考えればよいことになる。

 順序制約のある統計的方法ではしばしば、対立仮説として、
 第1の処理≦第2の処理≦第3の処理≦第4の処理≦・・・(第5以下省略)
 ただし、少なくとも一箇所では厳密な不等号つまり<が成立する
をとり、帰無仮説として、
 第1の処理=第2の処理=第3の処理=第4の処理=・・・(第5以下省略)
をとる。

 順序制約のある統計的な方法では、凸解析と共通した用語や内容が出てくることがある。


Jonckheereの検定 ノンパラメトリックな順序制約のある仮説の検定の代表的なもの。対応する非傾向性仮説用の検定はKruskal-Wallis検定である。

isotonic回帰